UPDATE EARTH シンポジウム Spring

「UPDATE EARTH
シンポジウム Spring」が
行なわれました

UPDATE EARTH シンポジウム Spring

3月7日、「UPDATE EARTH シンポジウム Spring」が都内で行われました。

本シンポジウムは一般財団法人UPDATE EARTHが主催し、日本の未来を変えるためのイノベーションとスタートアップについて考える場として開催。はじめにUPDATE EARTH理事長の福田正氏が挨拶に立ち、本日の趣旨説明の後、「今回は忌憚のない意見交換を重視し、パネル討論も行います。参加者の発言を積極的に取り入れながら進めていきたいので、どうぞ率直に意見を述べてほしい」と話しました。

衆議院議員でUPDATE EARTH名誉会長の新藤義孝氏

続いて、衆議院議員でUPDATE EARTH名誉会長の新藤義孝氏が挨拶。現在の世界トップ 10企業のうち9社がアメリカ企業であり、日本がグローバル競争で後れを取っていることを挙げ、「既存の強い企業群に対して新しい経済の流れが生まれて競い合うことで循環が起き、結果的に日本全体が世界で戦えるようになるべき」と指摘。志を高く持ち、大きな夢を描きながら皆で実現に向けて努力することが重要で、そのための支援と連携を呼びかけました。

特別セッション・ニトリホールディングス代表取締役会長 似鳥昭雄氏

特別セッション・ニトリホールディングス代表取締役会長 似鳥昭雄氏

今回の特別セッションとして、株式会社ニトリホールディングス代表取締役会長・似鳥昭雄氏が登壇。起業までの経緯から成長戦略、現在の事業運営や経営方針などについて詳細に語られました。

似鳥氏は1967年、23歳の時にニトリの第1号店となる「似鳥家具卸売センター北支店」を北海道札幌市で創業。親から100万円を借りて夫婦二人三脚、30坪の店舗でスタートしました。販売担当だった妻から指示された商品選定の3か条が、第一に「安価であること」、第二に「良い品質機能」、第三に「人間同様に顔を連想させるデザイン」。その通りに仕入れるようにしたことが現在の成功につながり、「家内は恩人の一人」と非常に感謝しているそうです。

会社としての大きな転機は27歳でアメリカを訪れ、日本との生活水準の格差に衝撃を受けたこと。物価の安さや部屋全体をコーディネートした家具や設備の充実ぶりを参考に、帰国後は売上・利益重視から「日本の暮らしをアメリカのように豊かにしたい」という目標に転換。価格を抑えつつ日本人が喜ぶ商品を提供することに注力し、メーカーや問屋を巻き込んで製品開発を推進。流通面での障害に直面し、最終的には台湾で生産して輸入する形を取ることになり、それがニトリの原点になったと言います。

Point 1:国際展開と製造体制

台湾での商品開発を皮切りに海外調達比率を約90%まで拡大、家具は自社生産比率約40%。海外の生産拠点は、労使環境・法制度変化によりインドネシアから撤退後、20年以上前からベトナムのハノイに工場を設立。賃金上昇(年4万円→約100万円)への対応として機械化・ロボティクス・AIを活用し、直近2年間で約20億円のコスト削減と1,000名超の省人化を実現しました。物流・インフラに関しては、大規模自動化物流センターを全国8~9拠点で展開。コンテナの取り扱いは約14万本規模と国内最大級。主力港を川崎へシフトして港湾稼働率の向上に寄与。通関士を内製化し一気通貫の国際物流体制を確立しています。

Point 2:人材・組織の現況

従業員数は約15,000人。長期の株主価値創出で「株価上昇貢献が大きい企業」として評価されています。就職人気ランキング(マイナビ×日経)で3年連続1位に輝き、企業体験施策も7年連続首位クラス。前年の新入社員は1,155人で、初任給は31.5万円。労働生産性を日本平均の2倍以上に向上させながら、従業員の給料を継続的に引き上げ。教育投資は上場企業平均の5倍超に上り、次代リーダーの養成を目的に毎年1,000人以上、延べ15,000人をアメリカ研修に派遣してきました。

Point 3:最新の取り組み

99,000円のドラム式洗濯機が日本家電大賞で銀賞を受賞するなど、家電カテゴリ全体で品質評価が向上。3年前からベトナムで稼働している世界最大級のカーテン工場では、年間1,000万メートルの生産能力を誇ります。タイの自社工場では、日本国内で回収したペットボトル約5,000万本を原料に、繊維化・染色・製織・縫製まで一貫でカーペットを生産する独自垂直統合モデルを構築。「これを一カ所で行っているのは、世界でここだけです」。

Point 4:ガバナンス・社会貢献活動

「子孫に遺産を残さず社会に還元」の創業理念を徹底し、各財団へ定期的に寄付を行っています。奨学財団は毎年約3,000名へ約12億円を無償支援、文化財団では美術館の整備費用、福祉財団では北海道の老朽化した消防・救急車の更新支援に約10億円拠出など。さらに先ごろ自社株を原資に各財団へ約1,000億円ずつ寄付し、2~3年内には個人資産約1,500億円も寄付する予定。また、費用の半分を個人負担する形でウクライナ避難民への支援・就労受入を実施。国内で最も多くのウクライナ人が働く企業の一つとして、社会的包摂を実行しています。

パネルディスカッション:“スタートアップ”と“プラットフォーム”

パネルディスカッション:“スタートアップ”と“プラットフォーム”

本パネルは福田氏をモデレーターに8名のパネリストを迎え、「スタートアップ×プラットフォーム」を軸に規制緩和の重要性や海外進出の必要性などについて議論が展開されました。

まず福田氏は、スタートアップが国の補助金を上回る支援を得て大きな成果を挙げられている現状について、率直なコメントを求めました。

衆議院議員の新藤氏は「政治は規制緩和などで事業環境を整備すると同時に、基礎的な分野やチャンス創出のために必要な財政支援を区別して行うべき」と主張。さらに民間のダイナミズムを引き出すためには、「税金である公的予算の使途は会計検査院のチェックに適う厳格な枠組みのもとで運用される一方、その枠を超えた自由な資金の使い方や発想は民間やスタートアップの領域に委ねる必要がある」と指摘しました。

続いて福田氏は、ブラザー工業株式会社代表取締役会長・小池利和氏に「名古屋の代表的企業が世界に羽ばたいてきた歴史を踏まえて、若者が海外に出にくい現状を変えるために背中を押すような一言をお願いします」とリクエスト。

小池氏は、「多くの企業がグローバル化を謳いながらも実際は海外顧客の声に触れておらず、持続的成長への勢いを欠いている」という現状を懸念。若い世代は「経営の金銭問題等はトップ層に任せて、自らはもっと外へ出て荒っぽくても挑戦を重ね、グローバルなお客さんを自力で獲得する意欲を持つべき」であり、「とにかく元気に前向きにいろんなことにチャレンジし、少子高齢化で縮小する国内市場を逆転のチャンスと捉えてほしい」とエールを送りました。

一般社団法人スタートアップエコシステム協会代表理事・藤本あゆみ氏は、昨年も20カ国25都市を視察してきた立場から、海外から見た日本のスタートアップについて言及。「良いものを作ろうとする姿勢は高く評価されているが、誰かが見つけてくれるだろうという受け身の期待は通用しない」との問題認識を提示。「これだけの価値があるので買ってください、と積極的に売り込む姿勢を持てば非常に脅威になり得る」として、自身も関係者と共に外に向けた発信力や成長戦略の議論をさらに重ねて、具体的な行動につなげていきたいと話しました。

タイを拠点に20年以上前から日本文化に関連するイベントの運営を手がけている株式会社G-Yu Creative副社長・小林智美氏は、今年で11年目となるアジア最大級の祭典「JAPAN EXPO THAILAND」などを実例に、日本のエンタメ関係者にとっての海外進出の重要性を説明。「アジアでの日本熱は極めて高く、日本の関係者の間でも徐々にかつ確実に海外活動への関心が高まり、弊社への相談件数も年々増えています」。これに伴い同社はエンタメ分野だけでなく、ビジネス領域でも日本とアジアの懸け橋の役割を果たしており、企業間やソフトパワーを通じた連携を進めています。

プロダンスリーグ「D.LEAGUE」や世界最大規模のダンスバトルイベント「DANCE@LIVE」などを運営する株式会社アノマリー代表取締役CEO・神田勘太朗氏は音楽などと同様、ダンスにも適切な著作権を求めて、人の動きを知財化するプラットフォーム「MOTIONBANK」を開発。現在はアフリカ諸国で伝統リズムやダンスを収集・分類し、その利用に応じて現地の人々にも収益が還元されるエコシステムを構築する活動も進行中です。スタートアップにおいては「数多くのサービスの中で何を目的に立ち上げるかを明確にすること。理念に基づいた事業展開こそが長期的な成長と社会的意義をもたらす」と述べました。

主に法人向けの出張手配代行サービスを取り扱う株式会社IACEトラベル代表取締役社長・西澤重治氏は、収益が9割減少したコロナ禍に事業拡大に転じた経験を語りました。旅行代理店から旅行会社に事業モデルを転換してデジタルを導入したところ、「個人向けのオンライントラベルエージェントは数ある一方、企業向けのデジタルサービスは高額で対象が大手企業中心だったため、スタートアップや中小企業の方が海外に行く手段を応援することを目指しました。今回のシンポジウムからもスタートアップ支援の重要性を改めて実感しており、今後も微力ながら共に取り組んでいきたいと考えています」。

『プラットフォーム学』(KADOKAWA)の著者である京都大学大学院情報学研究科教授・原⽥博司氏は、プラットフォームの定義や複数のプラットフォームがネットワークを形成する「プラネット」の概念、日本オリジナルのプラットフォームの構築の重要性などについて詳細に解説。単に共通基盤を提供するだけではGAFAに太刀打ちできないため、「日本の食文化やゲーム、家具などに見られる独自性を研究して何が受け入れられているのかを学び、自らのプラットフォームに組み込むこと」を提唱しました。

そこで福田氏は、家具にとどまらず新しいテクノロジーやIoT化を取り入れて拡張されているニトリプラットフォームを通じてスタートアップが連携し、日本発の大規模プラットフォームに育て上げることを応援してほしいと提案。

似鳥氏は顧問として他社の支援も行い、具体的なマーケティング助言や料金表示の提案によって顧客数を劇的に増やすなど、赤字企業の再生を幾度も成功させています。「若い人は大好きで、いろんな集まりとかアドバイスはどんどんやっていますし、会社の立て直しはとても楽しいんですよ」と話し、自社を離れて再生事業に専念したいくらい強い思いを持っていることを明かしました。

最後に福田氏が「パネリストの皆さんをはじめとする諸先輩の協力を肝に銘じつつ、日本から世界で活躍する“スタートアップの大谷翔平”を、いかにして輩出するか」という課題に対して、着実に取り組んでいく意向を示してパネルディスカッションを締めくくりました。

「異能vationジェネレーションアワード」表彰式

「異能vationジェネレーションアワード」表彰式

今年度で9回目となる「異能vation ジェネレーションアワード」の表彰式が行われました。 “異能vation”は2014年度から2023年度までIT技術開発において失敗を恐れず挑戦する人々を発掘し、ゼロから“一”のステージへ引き上げることを目的とする総務省の支援プログラムでした。2024年度からは異能vationプログラムの想いを引き継ぎ、「失敗を恐れずチャレンジする」というマインドを大切にし、官民一体となって日本全国から異能を発掘する「異能vation ジェネレーションアワード」を開催しています。今年度の応募総数は3,632件に上り、その中から43件がノミネートされ、この日、12件の企業特別賞が発表されました。各企業のプレゼンターと受賞者が1組ずつ登壇して記念のトロフィーが贈呈され、それぞれプロジェクトの選定理由や受賞の感想、注目ポイントなどをスピーチしました。

株式会社IACEトラベル 企業特別賞

【サイズと容量を変更出来る便利な3WAY水筒/松本昭一】
容量の過不足というボトルの弱点を3通りの使い方で解消。日常を少し便利・豊かにする実用的発想が評価されました。

株式会社アクセストレードセンター 企業特別賞

【警報音の翻訳機/岩重祐生】
音の多様な聞き方・捉え方を翻訳し、意図を明確に伝える視点が評価されました。

株式会社アクティブ・ライフ・コミュニケーション 企業特別賞

【片胸無くした人でも気分が上がるブラ/大野香緒里】
自身の母親の実体験に根ざして着想。胸の左右差を隠さず、おしゃれとして楽しめるデザインで利用者の自信回復に貢献します。

株式会社HRK 企業特別賞

【「血糖値が気になる方へお米のおいしさそのままに」新しい価値づくりプラットフォーム:Smart GlycoRice/千葉大学 IMO スタートアップ・ラボ 客員起業家 松永博充】
全国の米に技術適用して血糖値の急上昇・急降下を抑制。一次産業の付加価値向上とフードテック推進の両立を目指します。

株式会社エヌ・ティー・エス 企業特別賞

【自律AI群による チームプレイ物流/株式会社EfficiNet X】
数多あるAI提案の中で際立つマルチエージェント協調により、国家レベルの物流課題解決へ挑む発想とビジョンが評価されました。

株式会社コーエーテクモホールディングス 企業特別賞

【人間が翼を生やす方法/谷澤健太】
バーチャルと物理体験を織り交ぜ、翼を得た感覚を提供。生物の学習過程の追体験や感情理解への拡張の可能性も期待されます。

素数株式会社 企業特別賞

【PneuSpoon:香りで味を作る未来のスプーン/真弓大輝、中村優吾、松田裕貴、安本慶一】
口腔内に香りを同時提示し、甘味・塩味の増幅や味質変調を実現。糖・塩分低減やアレルギー者の風味を体験できる支援を目指します。

一般社団法人ナレッジキャピタル 企業特別賞

【月面探索バイク製作PJ /地上・災害救助にも貢献/濱田浩嗣】
震災時の渋滞・瓦礫環境の機動対応ニーズから着想。「EXPO2025 大阪・関西万博」にプロトタイプを出展しました。

日本エンタープライズ株式会社 企業特別賞

【未来の自分と対話するAI/川上祐奈】
AIが答えを断定せずに一緒に考える「きっかけ」を提供するコンセプト。将来像との対話というワクワク感、意思決定支援の可能性が評価されました。

株式会社Nextwel 企業特別賞

【i-Key -合気の原理で「本当にやりたいこと」を可視化する、非言語身体共鳴プログラム/フジイ印刷株式会社 藤井聡】
日本の武道「合気」の技術を応用し、体と本音のつながりを体感。本心の言語化が困難な障害者の内発的動機を可視化し、就労支援の一役を担います。

株式会社フリースタイル 企業特別賞

【ペットとの仲が深まる!「Petalk」/岸本健】
専用のデバイス×アプリで「ペットと会話したい」という飼い主のニーズに応える体験を創出。しつけ・健康管理・見守りなどの実用性と将来性が評価されました。

株式会社みらいワークス 企業特別賞

【「DESHI Match」弟子募集専用マッチングシステム/匹田賢嗣】
職人の弟子募集と、中高生を含む若年層の弟子入り希望者を双方向でマッチング。地方創生や地場産業の技術継承に資するシナジーと、分かりやすいコンセプトが評価されました。

ICTスタートアップリーグ バリューアップピッチ

続いて、「ICTスタートアップリーグ」の令和7年度の採択者によるバリューアップピッチが開催されました。「ICTスタートアップリーグ」は「異能vation」の過去10年にわたる成果を受け継ぐ形で総務省、スタートアップに知見を持つ有識者、企業、団体といった民間が一体となって、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な“支援と競争の場”を提供するプロジェクトで令和5年度より実施されています。
今回は、令和7年度採択者の中から4社が登壇し、これまでの活動や成果も含め、参加者に向けたピッチを行いました。

ハービット株式会社:海上コンテナ輸送に特化した国際物流クラウドの開発

ハービット株式会社:海上コンテナ輸送に特化した国際物流クラウドの開発

1社目の登壇者はハービット株式会社代表取締役の仲田紘司氏です。

事業概要と挑戦:
仲田氏は元船会社勤務の経験から、貿易業務はITとの親和性が高いにもかかわらず依然としてアナログが残るという課題意識を持って起業。航海期間が長い船舶輸送は遅延が起きやすく、常にどこかでトラブルが発生する業界の特徴を踏まえ、自社貨物の現在地や到着予定、遅延予測を可視化・予測するトラッキング製品を提供しています。国際物流業務の「経路選定とブッキング→トラッキング→請求支払い」というフロー全体をカバーするプロダクト群を拡充し、最終的にはAIが自動で最適な物流手配を行うことが目標。さらに第2のプロダクトとして、世界初となる遅延を反映した上での最適ルートの提示を実装しました。今回メンターの方々には大手企業への営業紹介の支援と、現在の成長率「3倍」をさらに10倍超へ拡大するための実践的なアドバイスを求めました。

有識者からの金言:
福田氏は、大きな機会を逃さず自ら積極的に行動して顧客との接点を作ることの重要性を強調。ニトリが国内最大級のコンテナを取り扱っていることを挙げ、「受け身で待つのではなく、そこにバーンと突っ込んでいって、ニトリプラットフォームに対してどんなビジネスを提供できるかを提案して場を開くべき」と強く促しました。さらに社会課題への貢献という観点から、震災やコロナ禍に普及したサービスや技術の活用を通じて何をしたいのかを明確にし、単なる流行追随ではなく本質的な目的を持って行動することの大切さを伝えました。

原田氏は、なぜ成長率を10倍超にしたいのか、それだけのマーケットがあるのか、そのために今どういうアクションを起こしているか、現在の技術で倍増時に対応できるのかといった点を質問。「技術的には10倍まで伸ばすことは可能ですが、これが100倍になると厳しい。弊社は後発で競合が多い中、まずは数ではなく高品質な成功事例の蓄積を優先しています」との仲田氏の回答を受けて、「ターゲットのニーズに深く応えられる誰にも負けないほど圧倒的にユニークなサービスの確立が成功の鍵になる」と助言しました。

株式会社ハイパーデジタルツイン:マイクロモビリティやロボットの完全インフラ型自動運転を実現

株式会社ハイパーデジタルツイン:マイクロモビリティやロボットの完全インフラ型自動運転を実現

2社目は株式会社ハイパーデジタルツインCOOの長谷川大貴氏です。

事業概要と挑戦:
同社が提案するソリューションは最新のスマートファクトリーだけでなく、日本特有の変化や混沌がある既存の工場や倉庫、街のような現場が対象。個々のロボットを賢くする従来の発想ではなく、空間自体を賢くすることで解決を図ります。ロボットに多くのセンサーを積む代わりに、監視カメラや交差点・信号などの空間側をセンシングすることで、リアルタイムに死角なく空間を把握。そこを走るロボットや通行人に対し、集中管制で安全かつ効率的に制御を行うアプローチです。現在はモビリティ関連の企業と連携しながら自動走行できる機器を増やしており、工場や倉庫から多くの引き合いを得ています。今後は協業先や仲間を拡大しつつ、工場を起点に街全体へと適用範囲を広げ、制度面や運用面での助言や施策的な支援を得ながら、プラットフォームの形成を進めたいと考えています。

有識者からの金言:
福田氏は、ニトリに自動化倉庫を提供している株式会社ダイフク代表取締役会長・下代博氏と挨拶を交わしたかを長谷川氏に確認。挨拶していないと聞くと「なぜ、そういうところに突進していく気合がないのか。誰かが話を聞いてくれるだろうという姿勢でスタートアップがいると、世界では全部負けていくと思う」と再び警鐘を鳴らしました。

藤本氏は福田氏のコメントを受けて「今、怒られたことを繰り返さないことが大事。スタートアップは最初に同じ失敗を経験して、試行錯誤を経て成長するものだから、今後の展開がすごく楽しみだなと思っています」とフォロー。また自身の前職時代の経験から、他者との接触機会や人脈を最大化することや、自分から積極的にコンタクトを取りに行くことの重要であると述べました。

日本通信株式会社代表取締役社長兼CEO・福田尚久氏は、デジタルツインが工場などの閉じた空間ならリアルタイム通信前提での運用が可能でも、屋外では通信が不安定なため適用が難しい点に着目。自動運転がカメラだけで成立している現状を踏まえ、「デジタルツインがどこに適用できて、どこに適用できないかといったことや通信の制約を時間軸で現実的に検討する必要があるのでは」と指摘しました。

運営会合メンバーで一般社団法人スタートアップエコシステム協会副代表理事・名倉勝氏は、同社の海外での事業展開にふさわしい都市として「スマートシティやデジタルツイン技術を強く求めている、アジアやサウジアラビアのような新興都市やロンドンなどの資金のある古い都市」を推薦。そうした市場や取り組みを進める組織に働きかけることが有望であり、自身も交流があるイギリスのイノベーション創出機関「コネクテッド・プレイス・カタパルト」のようにデジタルツインハブを運営し、技術を募集している団体へのアクセスが効果的であるとアドバイスしました。

株式会社Vanishing Company:犬猫の輸血マッチングアプリ「Blut」を提供

株式会社Vanishing Company:犬猫の輸血マッチングアプリ「Blut」を提供

3社目は株式会社Vanishing Company代表取締役・土岐沙也香氏です。

事業概要と挑戦:
「Blut」は血液を必要とする動物病院と事前登録されたドナー犬・猫をマッチングするネイティブアプリサービス。病院が動物種、必要血液量、血液型、希望日時を入力すると適合するドナーが自動的に絞り込まれる仕組みです。日本では犬・猫合わせて約1,600万頭が飼育されていますが、血液供給体制が十分に整っていないため、輸血の実施確率は1%未満と非常に低く、アメリカと比べて犬で3.3倍、猫で5倍の差があります。土岐氏は日本の獣医療で供給体制を整えれば救える命は大幅に増えると考えており、「動物福祉の対策が遅れている現状を変え、世界のスタンダードに引き上げることに命を懸けたいと思っています」と力強く宣言。その目標に向けて、大学病院との連携や地域からの利用希望の問い合わせ、獣医師会や日本獣医血研究会からもブラッシュアップの協力の声がかかるなど前進しています。

有識者からの金言:
選考評価委員であるデロイト トーマツ ディープスクエア株式会社 代表取締役社長の小林寛幸氏は同サービスが「社会的課題が非常に高く、ビジネスとして大きく広がる可能性がある」と評価。資金が入った際にはどの部分を優先してシステム化したいか、尋ねました。「今はありがたいことに採用希望者がおり採用面では困っていませんが、現状の人数では大学病院などへの全導入は到底不可能であり、増員や導入拡大を図るには人員確保と人件費を含む資金の両面での課題を解決する必要があります」との回答に対して、AIの伴走支援を自社で行っていることを伝え、「今後やり取りを進めたい」と申し入れました。

同社は福岡を拠点にしていますが、福田氏は「全国フランチャイズ化やペット保険との連携は容易で、重要なのはそのノウハウを持つ人材がどのように組み合わさって動くかである」と指摘。もし規制が関わるなら厚労省だけでなく総務省と連携して問題解決を図るべきであり、既存の経験者たちが積極的に関与すればスタートアップ側の技術と融合して新しい取り組みが生まれる可能性があるとして、「興味のある人は、ぜひ協力してほしい」と呼びかけました。

株式会社ZIFISH:スマート計量で実現する水産物流通デジタル情報プラットフォーム

株式会社ZIFISH:スマート計量で実現する水産物流通デジタル情報プラットフォーム

4社目は株式会社ZIFISH代表取締役CEO・江幡恵吾氏です。

事業概要と挑戦:
日本の水産業における人手不足と非効率な情報管理を解決するための新しい情報基盤、“水産のOS”開発を進めています。従来手書きで行われてきた計量や記録をデジタル化し、スマートフォンやタブレットで閲覧可能にすると同時に、魚の画像を撮影してよりリアルに示せる点が特徴。入札の音声をデジタル変換してデータ入力を行うなどして省力化を図り、漁業現場での作業時間短縮と事務用紙削減による業務効率化も実現しました。同システムは鹿児島大学水産学部の学生や同社メンバーが現場で利用者と一緒に構築してきたことからITリテラシーに依存しにくく、使いやすさを重視した設計になっています。鹿児島での導入を皮切りに全国展開と海外実証も視野に入れており、スマート計量と情報プラットフォームにより流通の透明化と産地価格の適正化、地域経済の活性化を促進します。

有識者からの金言:
選考評価委員であり株式会社Booster Knob 代表取締役の松田信之氏は、各現場での業務慣行の違いや現場固有の要件を踏まえると、汎用的なソリューションだけでは対応が難しいのではと推測。「実証実験などを通して課題が見つかりましたか?」と質問。江幡氏は「取得すべきデータ自体は同じですが、地域によって収集方法や運用に差異があるため、システムをカスタマイズして対応したいと考えています。現時点で日本国内に共通の標準仕様は存在しないので、鹿児島県内の漁業関係者や全国規模の企業と意見を交換しつつ、どのような要素を標準化すべきかをこれから検討して作り上げていきます」と答えました。

福田氏は「具体的にどう進めたいのかが見えず、成長の度合いやターゲット顧客、必要な人数や場所、顧客の支払い意欲といったスタートアップとしての戦略や危機感が欠けていると感じました」と指摘しつつ、プロダクト自体は「いい感じにできている」と評価。「あとは営業を頑張るだけなので良い人材を確保して、来年どうなっているか楽しみです」と期待しました。

4社によるバリューアップセッションの終了後には、スタートアップリーグ設立時の総務省の担当課長で現在はデジタル庁参事官の川野真稔氏が挨拶。本日のシンポジウムを通して「スタートアップリーグが総務省の補助金だけでは賄えないほど、有形無形の多大な支援を生み出していることを確認することができて深く感動しました」と川野氏。現在は既存のアナログ規制を見直す仕事を進めており、規制緩和と技術導入の組み合わせで自治体から多数の引き合いが来ているとのこと。「まだ営業をかけていない企業は積極的に自治体や関係省庁に、必要であればデジタル庁にも提案を持ち込んでほしい」と訴えました。最後に評価委員の方々には参加者を厳しく鍛えてほしいとのお願いと合わせて、参加者の皆さんの活躍が日本の発展につながることを願い、「ぜひ力強く挑戦してください」と激励しました。

「令和7年度STARTUP LEAGUE敢闘賞」授与式

「令和7年度STARTUP LEAGUE敢闘賞」授与式

当初は今年度の採択者・全62社の中から世界に通用するほど著しい活躍を遂げた1社を選考し、「STARTUP LEAGUE of the Year」として表彰する予定でした。しかし今年度から新設された取り組みということもあり、現時点で1社を選ぶのは非常に難しいという判断に至り、特に成長を遂げた4社に「令和7年度STARTUP LEAGUE敢闘賞」が授与されることとなりました。

株式会社KiAI
有識者の助言を力に変え、事業の舵を大きく切ることでインテリジェンスプラットフォーム事業を飛躍させました。株式会社IACEトラベルとの連携を通じてAIと人との知見を融合させ、真実性の担保に取り組むという新たな手法を確立。確かな成果へとつなげたことが高く評価されました。

株式会社トイエイトホールディングス
海外での事業を着実に進展させるとともに、国内での新たな道を開きました。スタートアップリーグの活動を積極的に活用して国内行政との連携を深めるなど、そのグローバルな視点とスタートアップリーグメンバーとしての精力的な取り組みが高く評価されました。

株式会社フィッシュパス
枠にとらわれない柔軟な挑戦で事業を大きく成長させました。国内では獣害対策という新たな分野に進出し、海外ではグローバルな市場を開拓するなど、豊かな行動力で未来を切り開いた実績が高く評価されました。

最後に、総務省国際戦略局技術政策課スタートアップ支援室室長・佐藤司氏が授与式を総評しました。「敢闘賞を受賞した採択者の皆さんは世界に出て勝っていける熱意あふれる方々で、我々はそうした挑戦心のある人たちを応援していきたいと思っています。先ほど川野さんからもお話があったように、ちょっと厚かましいくらいガツガツ行かないとスタートアップは勝ち上がっていけないので、ぜひ一緒に頑張っていきましょう」。

イベント総括

イベント総括

全てのプログラムが終了後に会場内で交流会が行われました。

参加者の方々に本日の感想を尋ねると、バリューアップセッションに登壇した株式会社ハイパーデジタルツインの長谷川氏からは「普段はそうそう会えないような方々から、世界で一流になるために必要な視点や意見を得られたことが非常に大きな収穫」との受け止めが聞かれました。これまでアカデミーへの参加頻度が高くなかったそうですが、今回その機会の価値を再認識したことで、今後は外部や公開の場を活用しながら視座の高いフィードバックを取りに行く意欲が伺えました。

異能vationジェネレーションアワードの企業特別賞を受賞した株式会社EfficiNet Xの松井浩介氏は「アイデアを評価された点は大きな成果として受け止めていますが、受賞自体がゴールではなく、その先の事業展開が重要」という認識が共有されました。またバリューアップセッションを通して「事業推進のためには受け身では不十分だという気づきがあり、今後はより能動的に関係者と接点を持ち、ビジネス機会を広げていく必要があると感じました」。

STARTUP LEAGUE敢闘賞を受賞した株式会社KiAIの大場一雅氏は、「大変な名誉であると同時に、弊社がこの1年で進めてきた大胆な事業方針転換が正当に評価されたことへの強い手応えを感じられたことを光栄に思っています」と述べました。さらに今年度のスタートアップリーグの支援・活動全般について、「金銭的な補助以上に、スタートアップリーグが提供するバリューアップの仕組みや伴走支援の価値が大きかった」と振り返りました。

本シンポジウムを通じて、スタートアップと既存企業の連携、日本の経済的競争力向上の重要性について深い議論と理解が促進されました。

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